【第二章】ブランコの儀式 顔の傷という「魂の勲章」

本編(時系列)

【異邦人の孤独】

魂が入れ替わったあの日から、私の世界は一変しました。 人の本音が聞こえ、感情の渦がダイレクトに流れ込んでくる。幼い私にとって、この世界はあまりにも眩しく、そして騒がしすぎました。

私は無意識に感じていました。 「目立ってはいけない。このままの光を放っていたら、この世界では生きていけない」と。

【神聖な計画】

その日は、田舎の静かな公園にいました。遊具は、古びたブランコが数台あるだけ。 私は、吸い込まれるような静寂の中で、ある「計画」を実行することに決めました。

それは、事故ではありませんでした。 私は、自分の意志で、うつ伏せの状態でブランコに乗り、大きく揺らし始めました。 風を切り、地面が近づき、遠ざかる。そのリズムの中で、私は「その瞬間」を待ちました。

【痛みを超えた瞬間】

ブランコが最高潮に達し、戻る加速度がついたその時。 私は、自分の顔をゆっくりと、狙いを定めて地面へと下げていきました。

顎から鼻にかけて、砂利が皮膚を削り取る衝撃。 真っ赤な鮮血が地面を染める。 けれど、不思議なことに「痛み」は全く感じませんでした。

ただ、冷徹なまでの静寂の中にいました。 「これでいい。これで私は、普通の子供として隠れて生きられる」 そんな、幼子とは思えない奇妙な安堵感が、私を包み込んでいたのです。

【未完成の処置、完成した変装】

大騒ぎする大人たちに抱えられ、運ばれた田舎の町医者。 麻酔も処置もどこか適当で、私は一度も泣かずにその様子を見つめていました。 「泣かないなんて、なんて強い子だ」と大人は驚いていましたが、私はただ、別の次元から自分の肉体を観察していただけでした。

結果として、私の顔には傷が残り、顎は少しだけズレてしまいました。 けれど、それこそが私の望んだ「完璧な仕上がり」だったのです。 美しく、目立つ存在であることを自ら捨て、傷という「盾」を持つことで、私は自分の魂の純度を守り抜こうとしました。

【傷が光に変わる時】

それから数十年の間、私はこの傷を「隠すべきもの」だと思って生きてきました。 しかし今、アルクトゥルスの魂として目醒めた私は知っています。

あの時、自らつけた傷は、私が地球で生き抜くために選んだ「魂の勲章」だったことを。 表面的な美しさではなく、私の内なる光だけを見てくれる人と繋がるための、愛のフィルターだったのです。


次回は

「こうして『目立たないための変装』を手に入れた私は、次に、人々の感情にさらされる『エンパス』としての過酷な試練に直面することになります……。」