【第三章】境界 鏡とスポンジ、二つの過酷な感性の狭間で

本編(時系列)

【透明な嘘が響く街】

「変装」の傷を手に入れ、なんとか周囲に溶け込もうとしていた私でしたが、内なる感覚までは隠し通すことができませんでした。 大人たちの「いい子ね」という笑顔の裏に潜む、どす黒い嫉妬や苛立ち。 「大丈夫よ」という言葉の影に張り付いた、凍えるような孤独。

それらが、私には不協和音のような「音」や、肌を刺す「震え」として伝わってきました。相手が自分自身でも気づいていない、あるいは必死に隠している本音が、ガラス越しに覗き込むように透けて見えてしまうのです。

【「受け取る」エンパスと「暴く」逆エンパス】

当時の私は、二つの矛盾する強烈な性質に引き裂かれていました。

一つは、周囲の感情を無防備に吸い込んでしまう**「スポンジ(エンパス)」**としての性質です。誰かの悲しみは私の涙になり、誰かの怒りは私の動悸になる。自分と他人の感情の境界線が溶け、常に泥水の中を泳いでいるような感覚。自分の心がどこにあるのかさえ分からなくなるほど、他者のエネルギーに侵食されていました。

そしてもう一つが、さらに私を孤独にした**「鏡(逆エンパス)」**としての宿命です。 私はただそこにいるだけで、相手の潜在意識や「闇」を無意識にあぶり出してしまうエネルギーを放っていました。私が何かを言わなくても、相手は私の瞳を見るだけで、自分の中の汚れた部分や嘘を見せつけられているような気分になるのでしょう。

そのため、理由のない嫌悪感を向けられたり、突然の攻撃を受けることが日常茶飯事でした。 「吸いたくないのに、入ってくる」 「暴きたくないのに、鏡になってしまう」 この二重の性質によって、私の周囲には常に激しいエネルギーの嵐が吹き荒れていました。

【沈黙という名の聖域】

「なぜ、私は普通に笑い合えないんだろう?」 「なぜ、みんな思ってもいないことを平気で言えるんだろう?」

逃げ場のない嵐の中で、幼い私が自分を守るために選んだのは「沈黙」でした。 見えてしまうもの、聞こえてしまうものを口にすれば、さらに世界との乖離が深まる。そう悟った私は、ますます内側の世界へと閉じこもっていきました。

けれど、その沈黙はただの拒絶ではありませんでした。 泥水のようなエネルギーの中で、私は必死に「自分という光」が濁らないよう、心の奥底にあるアルクトゥルスの純粋な周波数を死守していたのです。それは、いつか本来の役割を果たす日のための、静かな、けれど命懸けの抵抗でした。

【境界線を見つける旅の始まり】

当時の私は、この鋭すぎる感性を「逃れられない呪い」のように感じていました。 けれど、長い年月を経て、私はようやく理解することになります。

この境界線のなさは、相手の痛みを自分のこととして癒すための高度な能力であり、あの鏡のような性質は、真実を照らし出すライトワーカーとしての資質であったことを。

私はこの過酷な感受性を通じて、三次元の人間心理という迷宮を、誰よりも深く、身をもって学んでいったのです。

次回は

「屠殺の記憶と、肉を食べられなかった私。 」三次元の「弱肉強食」という壁に、魂が悲鳴を上げたあの日々を綴ります。