東北に修学旅行中のジャージ姿の私たち、
恋バナに夢中。
湖畔のホテル、すでに夜の帳(とばり)。
カラン、カラン…
かすかな音、窓の外。
10階の窓辺、すりガラスの向こう。
小さな影、傘を手に佇(たたず)む少女。
歩き出して、傘を柵に当てている。
カラン、カラン…
「えっ・・・」
ひとり?お母さんはどこ?
夜更けの湖畔、一人ぼっち。
どこか寂しげにうつ向いて歩いている。
「ねえ、見て…」
友達に告げ、窓を開ける。
けれど、そこには誰もいない。
さっきの少女は、どこへ?
お母さんを待つ、幼い記憶。
楽しい思い出、忘れられない場所。
ここで、ずっと…
いつか、会えるといいね。
お母さんに会えるといいね。
窓を閉じる。
少女の幸せを、そっと願って。
