海岸通りの記憶

不思議な体験

夜の海岸通り
波の音が 遠くで囁く
ふと 視界の奥に
ひとつの赤い傘が 揺れていた

長い髪の 細い影
ただひとり 立ち尽くすその姿
対向車の光が 彼女をかすめた瞬間
そこには もう 誰もいなかった

あんな夜に
あんな場所で
誰を待っていたのだろう

理由は わからない
けれど 胸の奥に
ひとしずくの 悲しみが落ちて
波の闇に 溶けていった