お風呂に漂う湯気の中、シャンプーの泡を
洗い流しながら、
背中に、そっと気配を感じて。
振り返ると、扉の向こうに、
ぼんやりと黒い影が浮かんでた。
目をこらして、もう一度見ると、
影は人の形をしていて…びっくりしたけど、
でも、なんだかすぐに、わかったの。
「心配してきたんだね。どんな人なのかって?」
目が合ったような気がした。
きっと、私の波動を感じたんだね。
影は、すーっと、まるで急いでいるみたいに、
非常口のマークみたいに、走り去っていった。
ちょっと笑っちゃったけど。
どんな存在か、知りたかったのかな。
その時、パートナーの親戚の人が亡くなったって
聞いてたの。
子供の頃、よく遊んでくれたおじさんだった
らしいけど、今は遠い親戚で、ほとんど
交流もなかったみたいで。
私はそのおじさんという人のことを思い描きながら、
「よっぽど、心配だったんだね。でも何もお風呂に
入ってるときじゃなくてもよくない?」って(笑)
後でパートナーに、影の背格好を伝えたら、
「その通りだよ」って、驚いてた。
そうなんだ。
そんなに心配してくれてたんだ。
「こんな私ですけど、大丈夫でしたか?」
湯気の中に消えた影に、思いを寄せて
その優しい気持ちに感謝しながら、
ちょっぴり笑いもありで・・・
